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ネコの図書館

…「アイドルの探偵⁉」修正完了しました!「復讐という名の愛」修正中のため非公開です…
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01/28/19:09  後悔とその先

数分後、先に警察がやってきた。
警察が現場検証を始めたころ、翔也たちがやってきた。
「はぁっはぁっ……。お、遅くなってごめん」
 慌ててやってきたのだろうか、翔也も英輔も息が切れている。
「……しょうやぁ……。遅いよぉ……」
 香恋は翔也の顔を見たとたんに、泣き始めた。
仲間の顔を見たら安心したのだろうか。
「……ごめん」
 翔也は申し訳なさそうな顔を見せたが、香恋たちが無事だったことに少し安堵の表情を見せた。
すると、警察官が一人、翔也たちに近づいてきた。
「君たち、勝手に入ってこないでくれるかな。これは事件なんだ。邪魔してもらっちゃあ困るんだ」
 警察官は翔也と英輔の方を見て言った。
「……俺ら、こいつらの友達なんです。それでこいつらから電話があって、ここまで来たんですよ。でも、来てみたら、こいつら、精神的にやばそうじゃないですか。だから、こいつらの精神安定のためにも、ここにいちゃいけませんかね?お仕事の邪魔はしません」
 英輔は相手の目を見て、はっきりと言った。
そんな英輔の様子に負けたのか、警察官はあきれたような顔になった。
「……しょうがないな。今だけだぞ?現場検証が終わったら、彼らに話を聞く。その時は君たちに帰ってもらう」
「わかりました」
 そういうと、警察官はその場から去って行った。
「さてと……お前ら、大丈夫か?」
 警察官が去っていくと、英輔はその場に座り込んでいる二人に目線を合わせるように座り、二人に話しかけた。
「……大丈夫なわけないでしょ。尾行をさせられたかと思ったら、田村一樹が死ぬんだもん……」
 いつも気が強い香恋が今にも消えそうな声で弱弱しく言った。
「そりゃそうだよなぁ……」
 英輔はそういうと、頭をかいた。
「んじゃ、ちょっと、話するか?香恋、こっちに来い」
 翔也はそういうと香恋の手を掴み、立たせて、和也たちから少し離れたところに移動した。
二人が移動すると、英輔は和也の隣に座り、話しかけた。
「……あの事、思い出しちゃった?」
「……ああ。嫌でも思い出したよ」
 和也は無表情だったが、どこか少し悲しそうな顔をした。
「そっか……」
 少しの間、沈黙が訪れた。
その沈黙を破ったのは、和也の悲しげな一言だった。
「……俺さ、これからどうしたらいい?」
「え?」
 その時の和也には、いつもの明るい和也の面影はなかった。
「あのときもそうだった。俺はあいつの近くにいたのに、助けることができなかった。……探偵失格だよな」
 和也はそうつぶやくと、下を向いてしまった。
「和也……」
 英輔は少し悲しそうな顔で和也を見つめていた。
二人の間にまた沈黙が訪れる。
英輔は悩んでいるようだったが、決意したように和也に話しかけた。
「……あのさ、和也。お前に伝えなければいけないことがあるんだ」
「……何?」
 和也は英輔の真剣な声に顔をあげた。
「一樹が殺されたの、実は、推理たちは分かっていたみたいなんだ」
「……は?」
 英輔の口からあっけなく放たれた言葉は、和也の心に突き刺さった。
「……だから、一樹が殺されるかも知れないって、推理たちは知っていたんだ」
 英輔は俯き加減に言った。
「……どういうことだよ。知っていたのに、俺に尾行させたのか?俺を苦しめるために?」
 和也は英輔に詰め寄った。
「それは違うよ」
 詰め寄る和也に、英輔ははっきりと言った。
「あいつ、和也に自分を責めるのをやめてほしかったんだ。だから、和也と香恋ちゃんを傷つけるのを覚悟して尾行をさせた。お前に……お前に、いつまでも仮面をかぶって笑ってほしくなかったんだよ。過去のことを忘れようとするたび、お前、苦しんでたよな?俺も、推理も知ってるんだぞ?もう隠すなよ。辛いのなら、辛いって助けを求めてくれよ。俺たち、仲間だろ?お前だけが悪いんじゃない。あの被害者の家族だって、お前は悪くないって言ってるんだ。……それに、推理、前に言ってたんだよ。過去を忘れようとするから辛くて苦しいんだって。過去はどう頑張っても変えられないんだから、受け入れるしかない。受け入れた時に、人は強くなるんだって」
 英輔は悲しそうに言った。
和也は、それを聞いて、またもとの位置に戻り、考え込むように下を向いた。
「……そっか……」
 またもや沈黙が訪れる。
しかし、その沈黙は和也によってすぐに破られた。
「……俺さ、今まで、ずっと、生きていることが辛かった。何度も死のうって思った。でも死んで楽になったら、今でも苦しんでいる遺族に申し訳なくて、死ねなかった。推理に会うまで、ずっと、生き地獄だったよ。そんな中、推理に出会って、お前と出会った。お前らと話している時だけ、唯一、あの事を忘れることができた。そんでもって、幸せだった。でも、お前らと幸せな時間を過ごすたびに、俺のせいで苦しんでいる人がいるのに俺が幸せになっていいのかなって、ずっと思っていた。……俺、幸せになってもいいのかな?」
 和也は下を向きながら小さな声で言った。
英輔はそんな和也を見ると、なぜか和也を抱きしめていた。
「……当たり前だろ。あの遺族たちだって、お前を責めてはいない。あれは仕方なかったんだ。あそこに誰が居ても、殺されるのを止めることはできなかった。お前は幸せになっていいんだよ。きっと、遺族だってそれを望んでいる」
 英輔は苦しんでいる和也の気持ちがわかるかのように、そっと涙を流した。
「……ありがとう。お前らと出会えてよかったよ」
 和也も静かに涙を流した。
英輔は少し経つと、和也から離れた。
「……もう、一人で抱え込むなよ?」
「……うん」
 そんな時だった。
「そろそろ、お話を聞かせてもらってもよろしいですかね」
 警察がやってきて、和也に向って言った。
「……わかりました」
 そう答えた和也は、先ほどまでと違い、目に強い光が見えた。
英輔はそれを見ると安心したようだった。
「それじゃ、俺、もう帰るな」
 英輔はそういうと立ち上がり、和也を見つめた。
「おう。ありがとうな」
 和也もそういうと笑顔を見せ、立ち上がった。
「どういたしまして」
 そして、英輔は笑顔とともにそう言葉を残し、帰っていった。

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