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ネコの図書館

…「復讐という名の愛」修正中のため非公開です。名前を「ayu」から「LeoN」に変更しました。…
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04/06/15:15  


 そんな中、一人の青年は窓の外を見ながら、ある女との出来事を思い出していた。
彼女と出会ったのはある公園で、彼が絵を描いているときであった。


「あなたの絵、素敵ね」

 女はそう言うと、青年の隣へと座った。
青年は言われ慣れた言葉に、何も返事をしない。
彼女はそんなこと気にもしていないようで、彼が描いていた絵にそっと触れる。

「あなたから見る世界はこんなにも綺麗なのね」

 青年は今までに言われたことのない言葉に驚いて女の表情を見る。
女は優しく笑っていた。
その笑顔に、彼は惹かれてしまったのかもしれない。
彼女に向かって、いつもは言わないようなことを言ってしまった。

「……絵のモデルになってくれない?」

 女は驚いた表情を浮かべ、青年の顔を見る。
しかし、その表情はすぐに笑顔になった。

「喜んで」

 その後、二人は頻繁にその公園で会うようになり、絵は着実に形となっていった。

 しかし、そんな二人を引き裂く出来事があった。
青年は雇い主から絵の依頼をされたのだ。
加えて、その絵は取引先の大企業の社長に送る絵のようで、他の絵よりも優先してほしいと言われた。
 青年は悩んだ。そんな絵を描くくらいなら、自由に彼女の絵を描きたい。
そんな欲求が彼を支配する。
しかし、現実はそれを許さず、青年は依頼された絵に取り掛かることになった。
 それから青年はその絵を描くために、部屋に引きこもった。
もちろん、外へ出る余裕もなく、女と会うことが出来ない。
青年は時折、息抜き代わりに彼女の絵の続きを描いた。
自分の見てきた彼女を思い浮かべながら、丁寧に筆を進める。

 そして青年はついに両方の作品を完成させた。
依頼された絵を見せるとき、雇い主はもう一つ絵があることに気が付いた。
そして雇い主はその絵をたいそう気に入り自分のギャラリーに入れたいと申し出た。
青年はそれを拒んだ。この絵だけはダメだ、と。
 しかし彼は雇われている身である。彼の意見は当然ながら、通らなかった。
彼はその後、女に絵は完成したが渡せそうにないことを伝えた。
それを聞いた女は、悲しそうな表情をした。

「あなたは、もっと自由に絵が描きたいんじゃなくて?」

 青年は何も言わず、小さく頷く。
女はその様子を見ると、優しく笑った。

「それだったら、私があなたを盗んであげるわ」

 青年は驚いて彼女を見る。彼女はいつも通り妖美に笑っていた。

「12月25日の0時30分。大切なものだけ持って、あなたの住んでいるお屋敷の二階の物置部屋の窓側に来てくれるかしら」

「……本気なの?あそこは警備が重要だし、侵入することは難しいよ。それに僕を盗むって、どういうこと?君の絵を盗むんじゃないのかい?」

 青年は信じられないことを言う女に、不思議そうに尋ねる。

「あなたが描いてくれた絵は、アトリエに置いておいてくれたら必ず見るわ。でも、私が盗みたいのはあなた自身よ。その理由は、あなたがこれから自由に描く絵に大きな価値があると思っているから。その絵には、きっと、あの絵以上の価値が生まれるでしょう。……そうね、せっかくだし、あの絵はあなたの雇い主への置き土産にしてあげましょうか」

 女はそう言うといたずらっぽく笑った。
青年はそんな彼女を見て、小さく笑う。

「君は、優しいね。ありがとう」

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