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ネコの図書館

…「アイドルの探偵⁉」修正完了しました!「復讐という名の愛」修正中のため非公開です…
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05/22/18:57  プロローグ


 とある大学に、ミステリー研究会というサークルが存在した。
そこはその名の通り、ミステリー、すなわち推理小説が大好きな人間が集まるところである。
そんなサークルに、とある一人の青年が連れてこられようとしていた。
「俺、別にミステリーとかそこまで興味ないんだけど」
 その青年の名は松田優。
彼は面倒くさそうに彼の友人、川平大知に手を引っ張られていた。
「お前みたいに頭の良い奴が入ってくれると、サークルがさらに盛り上がるんだよ」
 大知は楽しそうに笑いながら、優をサークルのボックス前に連れてきた。
「さ、とりあえずは見学してみろよ。意外と面白いぜ」
「ミステリーなんて、簡単すぎて面白くないんだよ。最後まで読まなくても犯人なんてすぐ分かる」
 優はため息をつきながらも、大知に引っ張られてボックスの中に入った。
「こんにちはー。噂の松田君を連れてきましたー」
 ボックスには大きな机が一つ、その周りに椅子が何脚か置いてあり、そこに数人が座っている。
一人を除いて、皆優に注目していた。
「おお、君が噂の松田君か!君、頭いいんだって?なんでも、A大学の理学部の推薦を断ってまで、うちの大学の文学部に入ったそうじゃない。すごいわよね。なんでまた文学部に入ろうと思ったの?」
 優を目にすると、真ん中に座っている女がすぐに口を開いた。
彼女は眼鏡をかけていて、その口調はどこか気が強そうにみえる。
「えっと……」
「ちょっと、会長!いきなりそんな質問しちゃ、優が困惑するでしょう!」
 優が答えるのに戸惑っていると、大知がフォローしてくれた。
大知の話からすると、どうやら質問した女はこのサークルのサークル長のようだ。
「あぁ……そうね。ごめんなさい。つい、嬉しくなっちゃって。まずは自己紹介からよね。私の名前は望月奈津子よ。一応このサークルのサークル長を務めているわ。会長とでも、奈津子先輩とでも、なんとでも呼んでちょうだい。よろしくね、松田優君。君の話は大知君からよく聞いているわ」
 そう言うと奈津子は柔らかく微笑んだ。
優は自分のことを色々言った大知を横目で見ると、奈津子の方に顔を向け、そして自分に注目する他のメンバーに顔を向けた。
「松田優です。まだ入るかどうかは決めていませんが、よろしくお願いしま……」
「ああー!!!!!」
 優の自己紹介をさえぎって、突然大きな叫び声が響いた。
優は驚いて固まる。
「なんだ、あいつが犯人だったのか……いや、怪しいと思っていたんだけど、まさかね……」
 続けてそうブツブツつぶやく声の主の方を見ると、高校生くらいに見える女が本を読んでいた。
「松田君、ごめんね。びっくりしたでしょ。この子はね、本を読みだすと止まらなくて、声をかけても気づかないくらい集中しちゃうの。もう少しで読み終わると思うから、今はほっておいて大丈夫よ」
 奈津子は小さく笑ってその女を見た。
優は珍獣をみるかのようにその女に視線をやった。
しばらくすると、その女が小さくため息をつき、顔を上げて優の方を見た。
「あ、愛ちゃん、読み終わった?」
 奈津子がその女に尋ねる。
「あ、はい。読み終わりました」
 そう答える奇声を発した童顔な女こそ、この物語のヒロイン、長坂愛である。
「ところで、あの人は誰ですか?」
 愛の視線の先には優がいる。
「ああ、彼は松田優君よ。ほら、大知君の友達の」
 奈津子が説明をすると、納得したように頷いた。
「あの人が私と真反対の松田君ですか」
 愛はそう言うと、優の方を向いて優しい笑顔を見せた。
「初めまして。長坂愛です。よろしくね」
 優は慌てて、それに返事を返すが、先ほどの愛の一言が気になっていた。
「あの……俺と真反対って、どういうことですか?」
「ああ、それは、あたしは文系科目が得意なのに理学部に来たからだよ。松田君は理系科目が得意なのに、文学部に進学したでしょ?だから、あたしと真反対だなって」
 愛の返答に、優は納得したように頷いた。
「そういうことか……」
「っていうか、愛ちゃん、さっき何読んでたの?急に奇声を上げるからびっくりしたよ」
 大知が愛に尋ねる。
「あはは、ごめんね。犯人が思いもよらない人だったからびっくりしちゃって。読んでいたのは推川警部の事件簿シリーズの最新作で、どんでん返しがすごかったんだよ。読む?」
「推知まりさんの推川警部シリーズ?新作が出たんだ。読みたい!」
 大知は愛の横に座り、愛は大知に本を渡した。
「やっぱり、推知さんの本は面白いよ。これも、すごく面白かった!」
「まじか!それは楽しみだな」
 愛と大知は仲がよさそうに話している。
優の頭には?が多く浮かんでいる。
「説明をまだしていなかったわね。もう大知君から聞いているかもしれないけど、うちのサークルは推理小説を読んだり、推理クイズを考えて解き合ったり、とにかく推理を楽しむの。それでね、うちのエースは間違いなく愛ちゃん。あの子、ああ見えて頭いいのよ。他のメンバーが推理できなかった問題も、あの子は推理しちゃうのよね」
 優は頷きながら、大和と話す愛に興味を持った。
「さて、それじゃあ他のメンバーも紹介しましょうか」
 奈津子はそう言うと、他のメンバーに自己紹介をさせ始めた。
どの人物も真面目そうに見える。茶髪の大和が少し浮いて見えるのはそのせいだ。
「じゃあ、自己紹介は以上ね。ええと……せっかく来てくれたんだし、一つ推理クイズでも解いていく?」
 奈津子は分厚い一冊の本を手にして、優に尋ねた。
その本のタイトルは『アリバイ崩し』。
優はせっかく来たのだから、とそれを解くことにした。
「そうね……小手調べに、この問題とかどうかしら?」
 奈津子は手にした本を開き、あるページを開いた。
「A君、B君、C君、D君、E君は小学生以来の友人である。五人は一緒にとある湖へ旅行に行った。そこで事件が起こる。A君が何者かに殺されたのだ。死亡時刻は深夜1時。殺害方法は包丁での刺殺で、殺害現場は湖のほとり。容疑者はB君、C君、D君、E君の四人に絞られる。以下はその取り調べの様子である。その取り調べの中で、一人だけ嘘をついている。その嘘つきを当てなさい。
B君『僕は十二時からずっと部屋でテレビを見ていたよ。でも、深夜一時頃、トイレに行ったんだ。時計を見たから間違いないよ。その時、C君とトイレ前で会って少し話していたから、アリバイはある』
C君『深夜一時前、俺は煙草を吸っていたんだ。喫煙所の前をDとEが通ったから、多分その時間帯のアリバイはあるぜ。そのあとは煙草が切れたから近くのコンビニに買いに行ったんだ。その途中でBのやつに会って、少し話をして別れた。アリバイはちゃんとあるだろ?』
D君『深夜一時頃?E君と一緒に散歩をしていたよ。湖のほとりをね。あ、でも、そこでA君と会ったんだ。一時少し前だったかな。誰かを待っているって言っていたよ。それと、C君が煙草を吸っているのも見た。B君は、見てないよ。B君の部屋は物音もしなかったから、多分どこかへ出かけていたんだと思う。泊まったホテルは古くてね、隣の部屋の音がほとんど聞こえるから、テレビを見ていたり動いたりすると音が聞こえるからすぐに分かるんだ』
E君『深夜一時頃はD君と散歩をしていた。多分、C君は喫煙所でその様子を見たと思う。そういえば、散歩に行くときにB君も誘おうと思ったんだけど、B君は部屋にいなかったんだ。誘いに行ったのは、深夜の十二時三十分頃だったかな。ノックしても返事がないし、部屋にいる気配もしなかったから、多分どこかに出かけていたんだと思う』
さあ、嘘をついているのは誰だ?」
 優は問題を読み終えると、考えるように顎に手を当てた。
「あ、これ、あたしの好きな奴じゃないですか!あたしも解いていいですか?」
 愛が乱入してきた。
「もちろんいいわよ。でも、愛ちゃん、嘘つきを見分ける推理ゲームは得意だから、きっとすぐ解けちゃうわ」
 愛は問題を読むと、小さく頷き、「なるほどね」とつぶやいた。
優は驚いて愛を見る。
「もう分かったの?」
「うん。こういうの、得意だからね」
 愛はそう言うとはにかむように笑った。
優はもう一度真剣に問題を考えてみた。
しばらくしてその謎が解けたのか、優も「そういう事か」とつぶやいた。
「おお、二人とも分かったのね!さすが!ちなみに、この問題は皆、ヒント有じゃないと解けなかったわ」
 奈津子は嬉しそうに言う。
「会長……ヒントください!」
 大和は解けなかったようで、奈津子にヒントを乞う。
「そうねぇ……C君とB君はどこで会ったんだと思う?」
「え?そりゃ、トイレの前でしょ?」
「でも、C君は一言もそんなこと言ってないわよ」
「……ああ!そういう事か!」
 大和はそう叫ぶと、勢いで立ち上がった。
「ふふ。これで皆分かったみたいね。せっかくだし、松田君、解説をお願いしてもいいかしら?」
「はい。えっと……率直に言うと、嘘つきはB君です。B君は十二時からテレビを見ていたと言っていますが、D君とE君はB君の部屋からいるような音は聞こえなかったと言っています。E君は隣の部屋の音がほとんど聞こえるほど古いホテルに泊まっていると言っているので、おそらくB君はその時間、テレビを見ていないどころか部屋にいなかったんだと推測されます。しかし、E君が嘘をついていて、部屋は防音がきちんとなっていたと考えると、E君と同じことを言っているD君も嘘つきだということになってしまい、嘘つきは二人いるので、E君とD君は嘘つきではありません。次にB君が嘘つきだと仮定すると、B君と会ったと証言しているC君も嘘をついているのではないかと推測されます。しかし、C君は『途中で会った』と言っていて、『トイレの前で会った』とは言っていません。よって、D君もE君もC君を喫煙所で見たと言っているので、彼は嘘をついていない正直者だということになります。つまり、以上を考えると、嘘つきはB君だということになります」
 優が一気に解説をすると、部屋がシンと静まり返った。
しかし、しばらくすると皆拍手をし始めた。
「すごい!完璧よ!」
「ヒントなしでそこまで気付くとはすごいな」
 口々に賞賛の声をあげている。
「でも、俺より長坂さんの方がすごいですよ。俺より早く解いちゃったし……」
「いや、愛ちゃんは確かに解くのは早いんだけど、論理的に説明することが苦手でね。みんなが納得するように説明するのに時間がかかるんだよ」
 大和はそう言うと小さく笑った。
「どうも、説明は苦手でね」
 愛は苦笑いをして、尊敬するようなまなざしで優を見た。
「松田君、みたいに論理的に説明する能力がほしい……」
 優はそんな自分とは真反対な愛に興味を持ち、このサークルに入ることを決めた。
「俺、このサークル入ります」
 皆驚いた顔で優の顔を見る。
「え!?いいの!?」
「お、お前……急にどうしたんだ?」
 皆、優が入部を断り続けていたのを知っていたので、戸惑いを隠せないようだ。
「なんか、面白そうなんで」
 こうして優はミステリー研究会に入ることになったのであった。

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