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ネコの図書館

…「アイドルの探偵⁉」修正完了しました!「復讐という名の愛」修正中のため非公開です…
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09/13/22:18  生きること


 あの日、望実は銃刀法違反によって逮捕された。
望実は殺人を犯したと主張したが、それは望実自身が手をかけたわけではないので、罪に問われなかった。
望実はそれでも自分を責め続けていた。
 そして、望実がつかまって、一日。
賢人と誠、そして絵理奈は怪我で入院をした勇気のお見舞いに来ていた。
「……島崎さん……」
 恵理奈はまるで魂が抜けてしまったかのように、呟いている。
その姿を、勇気は悲しそうに見つめていた。
「……斎藤さん、昨日もずっと家でそうしていたみたい。朝迎えに行った時、まだ昨日と同じ格好で昨日と同じ体勢だった。俺らが声掛けるまで、ずっとそんな感じだったよ」
 誠はそう言うと小さくため息をついた。
「そっか……」
 勇気はそう言うと、突然恵理奈に話しかけた。
「斎藤さん、ちょっと、病院デートしません?」
「「「え?」」」
 勇気を除く3人は声をそろえた
「急にどうしたんですか?」
 恵理奈はそう微笑んだ。
その表情はあまりにも自然で、少し不安を覚えた。
「いや、ずっと病室にいるのもつまんないし、傷口も大体ふさがったし、散歩でも行きたいと思って」
 勇気は普通に恵理奈に接した。
「まぁ、確かに、ずっと病室にいるのも退屈ね。それじゃ、行きましょうか」
 恵理奈はそう言うと、立ち上がった。
勇気もベッドから降りる支度を始めた。
誠と賢人は顔を見合わせた。
お互い、素直に二人で行こうとする絵理奈の様子がおかしいと思っているようだ。
(いつもなら、俺たちを気遣って四人で行こうとか声をかけるのに……)
「じゃ、行ってきます」
 そして、二人は病室から出て行った。

 二人は病院の屋上へと来ていた。
「はぁ。やっぱり、屋上は気持ちいいですね」
「そうですね」
 恵理奈は屋上のフェンスの近くへと行き、小さな声で呟いた。
「ここから飛び降りたら……楽になれるのかな?」
 勇気はそれを聞いて、恵理奈の横へとやってきた。
「俺もね、死にたいなって思ったことあるんです」
「え?」
 恵理奈は先ほどのつぶやきが聞こえていると思わなかったようで、驚いている。
「姉ちゃんが、殺された後だったけな。無力な自分に嫌気がさして、俺に生きる価値なんてない。そう思って、廃墟の屋上に立って死のうとした。でも、そこに龍也がやってきて、俺にこう言ったんだ。
『生きることに価値なんてもともとない。生きることに価値なんて必要ない。生きることに価値なんて付けられないから』
さらにあいつはこう言った。
『自分は気付いていないだけで、必要としてくれている人は必ずいる。現に俺はお前を必要としているし。お前がいなくなったら、俺、どうしたらいいんだよ』って」
「……」
 恵理奈は何も言わず、うつむいた。
「それで、俺は必要とされているんだって気付いた。俺、バカだから、言われなきゃ気付けないんですよね。必要とされているって」
 勇気は笑った。
「それはあなたも同じだと思うんです。あなたは気付いていないかもしれないけど、俺はあなたを必要としている」
「……私の能力をでしょ?」
 恵理奈は淡々と言った。
「違いますよ。人間としてです。あなたの笑顔や言葉には、たくさん救われました。出会って、過ごしてきた時間はまだ少ないけれど」
 勇気は照れたような笑顔を見せた。
「……そんなの、嘘。あなたも人間だから、簡単に嘘をつく」
 恵理奈はそう言うと悲しそうに笑った。
「……あなたが今までどんな人と出会って、どんな経験をしてきたのかは分かりません。俺の言葉を信じる、信じないもあなたに任せます。でも、これだけは分かっていてほしい。あなたを大切に思う人は必ずいる。それは俺だけじゃない。島崎さんも、賢人も、誠も、あなたのことを大切に思っています。心配しているんですよ」
 勇気の瞳はとても優しかった。
「……っうぅっ……」
 絵理奈の目から涙が零れた。
「私っ……島崎さんに信用されてなかったのかなっ……。何年も一緒にいたのに、なんでも一緒に乗り越えてきたのに、どうして、どうして何も言ってくれなかったのかなっ……」
 勇気は優しく絵理奈を抱きしめた。
「それは、あなたのためを思ってですよ。あなたは優しいから、きっと島崎さんは言えなかった。『自分のせいで罪を重ねさせた』なんてあなたなら思うと思ったんでしょう。島崎さんも、大概、優しいですよね」
「一人で……一人でずっと抱えていたのに……私は何も気づかなかった……。本当、私ばかり助けられていて、何も返せなかった」
「そんなことはないと思うけど、そう思うのなら、これから返せばいいじゃないですか。島崎さんと永遠に別れてしまったわけじゃないんだし」
「でも、もう二度と私の所に戻ってきてくれないかもしれないっ……」
「そうなる前に、島崎さんを連れ戻せば良いでしょう?大丈夫、こちらから行けば島崎さんは絶対に拒否しませんよ。あなたのことを、とても大切に思っているんですから」
 絵理奈はしばらくして、顔を上げ勇気を見つめた。
「……っ本当にっ……畑山さんって優しいですよねっ……」
 絵理奈は笑い泣きで、勇気に笑顔を見せた。
それは先ほどのような作った笑顔よりも、よっぽど人間らしい、優しい笑みだった。
勇気は照れたようにそっぽを向き、
「な、なんですか、急に」
 と顔を少し赤らめた。
絵理奈はクスッと笑うと、勇気の腕に顔をうずめた。
「ほんと、畑山さんがいてくれてよかった。あなたは私の欲しい言葉をくれる」
 勇気はその言葉に目を丸くすると、優しく笑った。




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